真実であり、願いであり、魂であり、愛であり、全てである。
……ここは台所。片手に包丁。片手に玉葱。
料理が下手な母のおかげで、そして私の食への情熱のおかげで、私は結構料理上手だ。多分。
玉葱を微塵切りにする。6個まとめて。
三分の一はボウルへ。合挽き肉と人参のすりおろしと塩コショウ。レンジでチンしておいたキャベツに、一掴みずつ丁寧に包む。楊枝で端を止めておいて、スープは多め。固形ブイヨンにキノコとかセロリとか足して、深めの鍋で煮込む。とろけそうなロールキャベツ。
三分の一はフライパンでゆっくり炒める。途中で小麦粉と牛乳と、滑らかになったらスープを鍋から貰って、茹でておいたブロッコリーと海老、マカロニ。耐熱皿は一番大きいの。グラタンに使うチーズはスライスととろけるのと粉チーズ、にパン粉とパプリカ少し。これはオーブンへ。音までおいしいマカロニグラタン。
三分の一はフライパンで炒める。ダイスに切った鶏肉と、ご飯とケチャップと、グリーンピース(これを嫌いな人がいるなんて信じられない)。ほんの少しバターを入れる。味を調えて。溶いた玉子を柔らかく焼いて、お皿の上で包み込む。パセリも添える。金色の、なんて美しいオムライス。
その合間に、グリーンサラダ山盛り、胡桃とジャガイモと水菜と林檎はマヨネーズサラダ、トマトには……しまった玉葱もう一個微塵切りしなきゃ。でも面倒だから摩り下ろしにして。玉葱のドレッシング。少しだけパセリ。デザートに冷やしておいたインスタントだけど苺のババロア、買って来た南瓜のタルトにアイスクリームはバニラ。
そして炊き立てご飯。
『最後のが余計だ』
いいじゃない、グラタンもおかずだもん。
テーブル中ぎっしり全部並べて、それをネウロは呆れて眺めている。
『まったく、見ているだけで胃もたれを起こしそうですよ』
さあどうだとエプロン姿で私は無い胸を張る。
『我輩を貴様と一緒にするな。貴様が何をどれだけ食おうが、我輩をそれに巻き込むな』
……そうね分かってる。あんたが決して食べないのなんか分かってる。だってあんたは食べれないし。謎しか食べられないし。どんなにお腹が減ってたって、私の食べ物は分けたげられないし。
ネウロは大きな銀のスプーンを取って、オムライスの皿を引き寄せた。
あっ、と声を上げた私を呆れた顔で見上げて、
『どうせ貴様には炊き立てご飯があるだろうが。一升炊きの炊飯器たっぷりの炊き立てご飯が。我輩はこれ一皿で充分だ』
金色に美しくできた傑作のオムライスを、ぱくりと、食べた。
とにかく。
それでもって。
結局。
ネウロは眠っている。
その方が速く治るから。
お腹が鳴ったので、私は鞄に入れてあったチョコレートバーを齧った。
それなりに美味しかったのになんだか私は悲しい。
人間に近づくというなら胃袋からにしてよ。
そうしたら幾らでも食べさせたげるから。
偏食が過ぎるからこんなことになるんだよ。
かわいそうなネウロ。
お腹をいつもへらしてる、かわいそうなネウロ。
私のばかな夢の中で、ちょっとだけ嬉しそうな顔をしてご飯食べてた。
ああ私は頑張って、こいつにあんな顔させてやらなきゃ。
でないとお気に入りのチョコバーさえ、幸せな気分を連れてはこない。
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