モルヒネ





大体  長いこと  一人で迷って

そりゃ今は  かなり  幸せなんだと

だって  お前笑うから  んなふうにさ

俺に笑うやつ  いたっけ  覚えてねえよ

もっと笑って  笑って

泣くな  でなきゃ泣きそこねんな

夢があってさ  ゆずれねんだよ

あとまともに  使えてない  口とか

言葉とか  ああ  だけど  目からうろこってな

そういうこと  いいたいこと  ぜんぶ先いわれんのは

腹が立つんだよ  あいつは  いいよな

俺の口は  だってお前笑うから

なんも言わないで だってきれいだから

夕焼けみたいな


***


 昼食後にサンジ君の御愛想に付き合ってるのは、暇だってのもあるし、日課になってる のもあるし、それから多分そういう言葉に飢え気味だってのもあると思う。ゾロときたら 挨拶以外はろくに喋らないし、逆立ちしたって気の効いた台詞なんて思いつきすらしない と思う。だけど言われれば悪い気はしないしね。もっと正直に言えば嬉しいし、誉められ るってのはそれだけで意欲が湧いてもっと綺麗になろうとか、まあそんな向上意欲に繋が るじゃない。それは言い訳ともいえるんだけど。
 それで午後、いつものようにいろいろ仕事を片付けて、蜜柑畑の裏で昼寝してるゾロを サンジ君が起こしに行くというので、代わりを申し出た。後ろめたさではなくて、サンジ 君が行くと間違いなく方法は蹴り起こし。で、どつき合いが始まって、事態を収めるまで にルフィが腹減ったと騒ぎ出すのは目に見えてるから。さらに言うならウソップじゃ迫力 不足で無理だし、カルーとチョッパーは掴まって枕にされるのがオチ。ビビは無駄な遠慮 をして起こせないし、ルフィは食卓から離れない。
ゾロは寒くなったみたいで、甲板の方にのびてた。私が近付いても気付きもしないで、ぶつぶつと珍しく寝言なんか言って。隣に座ったら名前を呼ばれた。寝言で。
 ゾロとサンジ君は仲が悪いのだけれど、時々お互い相手に気付かれないように羨ましいというか腹立たしいというか、そういう複雑な視線で睨みつけてる。で、サンジ君に聞いたら、 「ねえナミさん。どうしてあなたはあんな偏屈野郎がいいんですか」
 逆に聞き返された。
「それとも俺喋りすぎなんかなあ」
 別にそういうわけじゃないのよサンジ君。だけどゾロは逆に考えてるみたいよ。口を開いては閉じて開いては閉じて、ふて寝する。起こしにきたサンジ君にやつあたりする。私 がサンジ君と喋ってて、背中に感じる視線のきついことったら。
 無いものねだりとはよく言ったもので、饒舌なサンジ君に静かに見つめられたりしたら、どきどきするだろう。それと同じこと。寡黙なゾロがたった一言の言葉でも呟くなら嬉しくて柄にもなく有頂天になりそう。危ない危ない。本当に危ない。だってなんて欲張り。
ゾロは。
 私がサンジ君の御愛想聞いて楽しそうにしてんのが嫌なのかしら? それって妬いてる ってことなのかしら? それこそ大の苦手な御愛想を、言ってみようかと口を開いては閉じて。結局出来なくてふて寝して。
 それでいていきなり寝言で名前なんか呼ぶんなら。


***


窒息寸前の熱烈なキスなんて殴り起こされるより遥かに凶悪。

眼を開けたら逆光の夕陽に目の前の女が金色に光って見えた。










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