かみさま、きいてください。




ねえ、かみさま、かみさま、ふねのかみさま。
ぼくのはなしをきいてください。


ぼくをつくったのはやさしいひとでした。ぼくにのるはずだったのはやさしいひとでした。
やさしいひとたちがぼくをうみにつれだした。


ぼくのふねにはいろいろないきものがのります。
ひとと、ばけものと、きと、とりと、いろいろな。
ぼくはみなとみなのたからものをのせてうみをはしる。
ぼくのせはいつもにぎやかだ。ぼくのせはいつもいっぱいだ。
ぼくはいつも、うかんでるのがふしぎなくらい、たくさんをのせてうみをはしる。


ぼくのせにはいつもいいにおいがする。いいにおいをつくるひとはていねいにかたづけまんぞくそうにわらう。
ぼくのはらではいびきがきこえる。ときどきうそなのをぼくはしっている。おなじたからものをぼくらはきっとまもってる。
ぼくのかたでないたひとがいた。ないてないてぼくをおきざりに。わらっててをふって、もどってきたから、ぼくはうれしい。
ぼくのこえがきこえるひとがいる。ぼくをたいせつにしてくれる。ぼくをよんでくれる。だからぼくはこたえる。いつも、ぜったいに。
ぼくとおなじものをみてるひとがいる。いつもぼくのそばにいる。ぼくとおなじこころだから、ぼくらはなかま。
ぼくのせで、わらって、わらって、ぼくのなまえのねがいと、おなじこころで。
ぼくのたいせつなみんな。


かみさま、かみさま、もうすこしきいてください。
ぼくはまだちいさい。からだもとしもちいさい。でもぼくみたいなふねはきっとないよね。
ひがしのうみからやまこえて、なぎのうみからせかいのうみへ。
くじらにのまれて、きんぎょのはらをくぐり、ゆきのうみ、ねつのうみ、おおきなかわ、そらをとんで、くもをかけて。
ほうだんをくぐり、かいぶつをかわし、なんてなんて、ぼうけんはすばらしい。



ひとのだいくがいいました。ぼくはもうだめなんだって。ぼくはもうはしれないって。
もうすこし、もうすこし、みなとうみをはしりたい。でもみなはおりてぼくのせはからになった。
からになったはずだのに、ぼくのなかにはまだたくさんなにかがつまってる。
ういてるのがふしぎなくらいに、たくさん、たくさん。


かみさま、かみさま、ぼくはみなといきたい。

かみさま、かみさま、ぼくはきっとまだはしれる。


ぼくは、みなと、またすばらしいぼうけんへ、いきたい、だからかみさま。
ぼくをはしらせるひとをむかえにいきます。
ぼくをよぶこえにこたえます。
ひとのだいくはもうだめだといった。
でもきっとぼくみたいなふねはきっとないから、ぼくはまだはしれる。


かみさま、かみさま、いってきます。
もういちど、もどります。

ひとのだいくのいうとおりなら、ぼくのおもいだけがはしるのかしら。
ぼくはもうはしれないのかしら。

いいえきっとみなのところへ。


だってかみさま、かみさま、ふねのかみさま。

ぼくのたいせつなみなのように、あなたはとてもやさしくわらっているもの。











2006年9月25日
428話感想文

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